初めに
固有値、固有ベクトルは線形代数で一番大事といっても過言ではない概念です。本当のところを言うと線形写像の方が大事なのでしょうが、どうしてもよく使う概念が固有値、固有ベクトルです。この概念を使うと対角化(おそらく線形代数で一番ほかの分野で使われているであろう技術)などの技術も習得することができます。
固有値と固有ベクトル
ある行列Aが存在するとき次のような表式を満たす数α、ベクトルvをそれぞれ行列Aに対する固有値、固有ベクトルと呼ぶ。
固有値、固有ベクトルのメリット
ご存知のとおり、行列の積の計算はひたすら面倒くさいです。そして行列の積の計算が面倒なら行列の累乗も面倒くさいです。
そういった時に解決するために固有値、固有ベクトルを使ってあげると行列の積を数の積にすることができます。そうやって計算すると簡単に計算できます。
問題の例
実際に問題として出題しているので見ていただけると嬉しいです。
まずはNo.5.0の問題です。
解答
これと同じ操作をしてあげるとA^nを出すことができます。
固有値の条件
固有値という数は特殊な数です。ですので求めていく必要があります。求めるときに一般的に使われるのが行列式の方法です。ただまず初めに固有値はどういう条件を満たしていないといけないのかについて考えていきたいと思います。
固有値の定義式から出していきます。
が成立する。
このときv=0となってはいけません。これは固有ベクトルの定義で決まっています。
なぜその定義が必要なのかというと、No.5.0の問題の(ii)で出てきたように単位ベクトルを線形結合で表す必要が出てきますが、0ベクトルを定数倍してもなんのベクトルにもならず線形結合してもなんの意味もないからです。
となり不適となります。
ある行列Bの逆行列が存在しないためにはdetB=0をみたすことが条件となる(行列式のまとめ)のでdet(αE-A) =0とできる。この方程式から固有値を求めることができます。
すこし抽象的すぎてわかりづらかったと思うのでもっと簡単な話になおしてみます。
次の連立方程式が一般に成立するときの条件を考えてみます。
このとき上の方程式の定数倍が下の方程式になっていなければならない。そうでないとx=y=0となってしまいます。
これだと分かりにくいと思うのでもう少し特殊な例を見てみるといいかもしれない。
この式は明らかにx=y=0になる。
こういうときはもちろん0ベクトルでない状態をとることもできます。0ベクトルでなくこの式を満たしていればこのときのベクトルはどんな値を示していても大丈夫です。
行列式のまとめでも言ったように行列式は元は連立方程式が解けるかどうかの判定に使われていました。この方程式の時解けるとx=y=0で不適となってしまうので行列Aが解けない連立方程式に対応しなければいけません。よってdetB=0となります。(行列式のまとめ)
また解けない連立方程式であるならrankB≠n (Bはn×n正方行列とする)である必要もあります。一つ目のBはrankB=2となり、二つ目のBはrankB=1となります。よってこの法則も満たしています。
とりあえず息切れしてきたのでその1はここまでとします。次回は対角化までいけるといいな、と思ってます。
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